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消化管:食道・胃疾患(米田 晃)

食道
  • 鏡視下食道切除術の胸部創と腹部創

    鏡視下食道切除術の胸部創と腹部創

対象疾患としては食道癌、食道粘膜下腫瘍、食道裂孔ヘルニア、食道アカラシア、食道憩室等の外科的治療を行っています。
食道癌に対しては、拡大内視鏡・超音波内視鏡・CT・PET/CTなど各種画像診断を駆使して病変の進行度(病期)を正確に診断し、患者さん一人一人に適した治療法を決定します。
食道癌の治療は外科だけでなく消化器内科・耳鼻咽喉科・形成外科・放射線科・麻酔科・集中治療部のいずれもが高いレベルを保つ必要があり、当センターではこれら全てが揃った環境で密接なチームプレーで行っています。胸部食道癌に対する手術は、2007年より低侵襲の胸腔鏡下食道切除術を標準術式としています。
胸部食道癌手術は頸部・胸部・腹部にわたる負担の大きい手術ですが、胸腔鏡手術は術後回復が従来法(開胸開腹手術)と比べて極めて早く、術翌日から歩行を開始できます。
2017年からは3D内視鏡システムを、2020年からは4Kシステムを導入し、より精密かつ安全な手術を行うことが可能となっています。
 
  • 腹腔鏡下胃全摘術後の創部

    腹腔鏡下胃全摘術後の創部

対象疾患は胃癌および胃粘膜下腫瘍などで、年間約80例の手術を行っています。早期胃癌では、拡大内視鏡・超音波内視鏡などにより病期を正確に診断し、消化器内科・放射線科とチームで、患者さん一人一人に最適の治療法を決定します。
内視鏡治療の適応とならない病変に対して、腹腔鏡下手術を積極的に導入し、低侵襲かつ術後障害が少ない手術を心がけています。進行癌に対しては手術と薬物療法を適切に組み合わせることで、最大限の治療効果を狙います。胃粘膜下腫瘍に対しては、腹腔鏡下胃局所切除や、消化器内科と協力して腹腔鏡・内視鏡合同手術を行っており術後のQOLを最大限に考慮しております。

消化管:大腸

日本消化器外科専門医;藤岡ひかる、谷口 堅、黒木 保、竹下浩明、北里 周、永田康浩


日本内視鏡外科技術認定医;黒木 保、竹下浩明

当院は大腸癌研究会参加施設です。
大腸癌(結腸癌・直腸癌等)、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病等)の外科治療を行っています。当センターでは、早期癌は内視鏡的癌切除術が標準治療法ですが、内視鏡治療の適応とならない場合外科的切除を行います。腹腔鏡手術を中心とした低侵襲かつ精度の高い手術で、高い根治性と機能温存を目指しています。また、日本内視鏡外科学会技術認定医が中心となり治療を担当しますから、安全性の高い手術を提供できます。

 
 
(1)結腸

部分切除から大腸全摘出まで幅広く対応します。腹腔鏡手術が標準術式で、より創が小さく整容性の高い単孔式腹腔鏡切除も取り入れています。

 
結腸癌症例数
  開腹手術 腹腔鏡手術(%) 合計
2009年 21 32(43.8%) 73
2010年 53 28(34.6%) 81
2011年 35 42(54.5%) 77
2012年 34 62(64.6%) 96
2013年 21 57(73.1%) 78
 
(2)直腸

早期癌・進行癌ともに腹腔鏡手術による肛門温存手術に積極的に取り組んでいます。進行癌には術前化学療法・化学放射線療法を行うことで根治性を保ち、肛門機能温存を図ります。また、究極の肛門温存手術といわれる括約筋間直腸切除術も腹腔鏡手術で行っています(下図参照)。当科は、この括約筋間直腸切除術が腹腔鏡で可能である、長崎県でも数少ない施設の一つです。
 

直腸癌症例数
  開腹手術 腹腔鏡手術(%) 合計
2009年 38 8(17.4%) 46
2010年 23 14(37.8%) 37
2011年 20 21(51.2%) 41
2012年 11 34(75.6%) 45
2013年 8 33(80.1%) 41
 
下部直腸癌における肛門温存率と腹腔鏡手術
  腹腔鏡手術率(%) 肛門温存率(%)
2009年 26.7 68.9
2010年 46.4 64.3
2011年 51.6 77.4
2012年 87.1 83.9
2013年 86.7 90.0
 
  • 肛門温存手術の新たな手術方法
 
(3)炎症性腸疾患

クローン病から潰瘍性大腸炎まで、ほとんどの症例に腹腔鏡で対応します。若年者には整容性も重視し単孔式腹腔鏡手術を行います。

 
(4)その他の大腸疾患

直腸脱では、再発率が低い腹腔鏡による腹式アプローチを選択しています。短い在院日数での治療が可能です。

肝臓、胆道、膵疾患
(黒木 保、北里 周、池田 貴裕、福井 彩恵子)

 
肝胆膵領域の癌手術

日本肝胆膵外科学会高度技能指導医:黒木 保
日本肝胆膵外科学会高度技能医:北里 周
日本内視鏡外科学会技術認定医:黒木 保

 

外科、肝胆膵内科、放射線科、検査科がチームを編成し、治療方針を決定しています。その中で、外科は肝臓癌(肝細胞癌、転移性肝癌、肝内胆管癌)、胆道癌(胆管癌、胆嚢癌、乳頭部癌)、膵癌(膵頭部癌、膵体尾部癌)の外科的治療(肝切除術、膵切除術)を行っています。当センターは、日本肝胆膵外科学会の高度技能専門医修練A施設(高難度手術年間50例以上実施;長崎県3施設のみ、九州地区15施設、全国111施設)として認定されています。

 
治療を行っている疾患
【肝細胞癌】

肝細胞癌の治療は外科的切除、ラジオ波焼灼(内科)、血管造影による治療(放射線科)など種々あります。これらの中から患者さんに最適、最良の治療を提供します。肝切除では、積極的に腹腔鏡手術を取り入れた切除術を行っています。

 
 
【転移性肝癌】
以前は切除不能と考えられた癌の場合でも、抗癌剤療法により縮小させた後に積極的に切除を行っています。

【膵癌・胆道癌】
外科・内科・放射線科チームによる手術・抗癌剤治療・放射線治療を組み合わせた積極的な治療を行っています。症例に応じて腹腔鏡による体の負担が少ない手術を行っています。
 
 
癌以外の疾患に対する外科的治療

【胆石症】
胆石は、肝臓、胆管、胆嚢といろいろな場所にできます。症状のある胆石は手術が必要です。腹腔鏡による体の負担が少ない手術を行っています。

【脾疾患】
主に血小板が減少する病気に対し、腹腔鏡手術による脾臓摘出術を行っています。血小板増加を認めれば、それまで困難であった治療が可能となります。

乳腺、内分泌外科

乳腺、甲状腺、副甲状腺の専門的な治療を行っています。
長崎医療センター乳腺・内分泌外科は、乳癌学会認定施設、内分泌・甲状腺外科学会専門施設、JCOG参加施設として認定されています。ガイドラインに準じた標準治療や臨床試験などの最新医療が受けられる体制を整えております。また、医師(放射線科、乳腺外科、病理科、麻酔科、緩和ケア内科、精神科)のみではなく、看護師(外来、病棟、外来化学療法、緩和)、薬剤師、放射線技師、ソーシャルワーカー等とともにチーム医療を行い、当院の看護理念である「その人がその人らしく」暮らせるように患者サポートをしていきます。

 
乳癌
  • 乳癌手術症例数

    乳癌手術症例数

当施設で治療される乳癌患者さんは増加しています(右記グラフクリックで拡大)。
乳癌の治療は年々進歩しており、乳癌の性格(サブタイプ)によって治療法が異なります。治療法は、手術だけでなく、化学療法、ホルモン療法、分子標的治療、放射線治療など多岐にわたります。当施設では総合病院としての力を発揮し、外科による乳房切除術、形成外科による乳房再建術、化学療法、ホルモン療法、分子標的治療、放射線治療、専門的な病理学的診断、緩和チームや精神科による緩和医療など、がん拠点病院として乳癌診療に関わっています。
また、ガイドラインに準じた標準的治療以外に、九州および全国レベルの臨床研究(試験)に参加し、最新の治療が行えるように努めています。
 
  • 乳癌全生存率
また、患者会(さくら会)6月3月に開催し、術後患者さんとは、病棟看護師を中心として交流を深めています。また、当院にはがんサロン(語らん場)があり、患者さんたちが集まり情報交換をされています。
 
甲状腺・副甲状腺
  • 内視鏡補助下甲状腺手術

甲状腺癌、バセドウ病、原発性副甲状腺機能亢進症患者さんを治療しています。
甲状腺良性腫瘍やリンパ節転移のない甲状腺癌に対して、内視鏡補助下甲状腺手術(写真参照)を行なうことができます。内視鏡補助下手術を行うと、創が衣服で隠れる部位にあるため、甲状腺の手術をしたことがわからなくすることができます。