対象疾患・診療内容
胸部の解剖
対象疾患・治療内容
(1) 肺がん
日本人死因の第一位は“がん”です。“がん”の中で何が一番多いかといえばそれは肺がんです。肺がんは、(1)抗がん剤、(2)手術による切除、(3)放射線で治療され、呼吸器外科は手術を担当します。肺がんは2011年の全国集計では33,878例が切除され、年々増加傾向にあります。肺がん手術の進歩、それは“胸腔鏡下手術”の導入です。一言でいえば、“通常開胸手術”より傷が小さい手術ということになります。傷が小さければ、痛くない、治りが早い、短期間で退院でき早期に社会復帰できます。つまりは患者さんにやさしい手術です。長崎医療センターでは、70-80%を胸腔鏡下に切除しています(全国平均は62.9%)。
(2) 転移性肺腫瘍
すべての“がん”は血液の流れに入って肺に生着する可能性があります。これが“転移性肺腫瘍”です。転移した腫瘍は切除できれば予後を改善するので、転移数が少なければ切除します。可能な症例はもちろん胸腔鏡下手術で切除します。
(3) 良性肺腫瘍
肺に良性腫瘍ができることもあります。良性なので切除すれば再発することはなく問題ありません。小さければ胸腔鏡下手術で切除できます。
(4) 縦隔腫瘍
左右の肺と肺の間の部分を“縦隔”と呼び、ここには気管・気管支、心臓、大動脈、食道が存在します。これらの臓器の周囲に発生した腫瘍が“縦隔腫瘍”です。呼吸器外科手術の6.4%にすぎないまれな疾患です。縦隔腫瘍のなかでは胸腺腫瘍が最多で約半数をしめます。“胸腺”とは胸骨の真裏にある組織で、生まれてしばらくは免疫担当臓器ですが、成人では機能を失い小さな脂肪の塊になります。胸腺腫瘍を含む縦隔腫瘍は周囲に重要臓器があるため切除が難しく以前は胸骨を縦に切断して切除していました。現在は胸腔鏡下手術で左右の肋骨の間から切除することが多くなっています。
(5) 気胸
肺は肋骨と肋間筋、胸筋でできた胸壁と横隔膜に囲まれた“胸腔”という空間に存在します。肺に穴が開き空気が外に漏れ、漏れた空気が胸腔にたまり肺がつぶされて縮む病気を“気胸”と呼びます。肺の穴を縫い閉じるか、穴が開いた“ブラ”という部分を切除して治療しますが、現在は胸腔鏡下手術がほとんどです。
(6) 膿胸
“胸腔”に菌などにより炎症が生じ浸出液である胸水がたまると、“膿胸”という病気になります。感染症なので高熱が出ます。胸水や汚い膿を搔き出して治療することがあり、胸腔鏡下手術で行われることが多くなりました。
(7) 気管支鏡インターベンション
肋骨と肋間筋、胸筋を胸壁、胸壁と横隔膜に囲まれた部分を胸腔と呼び、胸腔の中に左右の肺と縦隔があります。縦隔は左右の肺の間の部分で、気管・気管支、心臓、大動脈、食道が存在します。