対象疾患・診療内容このページを印刷する - 対象疾患・診療内容

対象疾患・診療内容について

 肝胆膵領域の良悪性疾患を対象としています。おもな入院病棟は8階A病棟(42床)です。病棟内に超音波下の検査・治療が行える超音波処置室を有しており、肝生検、造影超音波やフュージョンイメージングを併用したラジオ波焼灼療法(RFA)、肝膿瘍や急性胆嚢炎に対する穿刺ドレナージにも迅速に対応可能です。

肝疾患診療

 かつてのB型肝炎、C型肝炎などウイルス性肝炎の患者さんが大多数を占めていた時代から時は移り、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、アルコール性肝疾患など、非ウイルス性の肝炎から肝硬変、肝がんへ進行する患者さんが増えてきています。 

1.ウイルス性肝炎
 C型肝炎に対しては2014年以降、経口抗ウイルス薬(DAAs:direct-acting antivirals)が登場し、現在では2~3ヵ月の治療で、95%以上のC型肝炎患者さんが治癒する成績が得られています。高齢、非代償性肝硬変、腎機能が低下した患者さんでも安全に治療が受けられるようになっています。 
 B型肝炎に対しては、経口の核酸アナログ製剤で血中のウイルスの増殖が有効に抑えることができ、肝炎の進行、肝がんの発生のリスクを下げることが可能です。 
 C型肝炎と違い、B型肝炎は服用を中止すると高率に肝炎が再発するため、長期間薬を服用する必要があります。

2.非ウイルス性肝炎(脂肪肝、アルコール性肝疾患、自己免疫性肝疾患など)
 肝生検に変わり、検査科と協力して非侵襲的な検査として、肝臓の固さの評価(肝硬度測定)をフィブロスキャンやシェアウェーブ・エラストグラフィ、脂肪肝の定量評価を超音波減衰法(CAP、ATT)といった新しい検査方法を用いて行っています。原発性胆汁性胆管炎(PBC)や自己免疫性肝炎(AIH)などの難治性疾患については臨床研究センターと連携して治療を行っています。

3.肝硬変
 肝硬変の合併症である、胃食道静脈瘤に対して、予防的あるいは緊急のEVL、EIS、バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)を、難治性腹水に対してCART(腹水濾過濃縮再静注)を行っています。また栄養科と協力して、肝硬変に対する栄養療法にも力を入れています。

4.肝がん
 外科、放射線科、病理診断科と連携し、治療方針の検討を行っています。
 早期肝がんにはラジオ波焼灼療法(RFA)、定位放射線治療、肝切除を患者さんの状態に応じて選択しています。 進行肝がんには肝動脈化学塞栓術(TACE)や分子標的治療薬および免疫チェックポイント阻害薬による治療を行っています。

胆膵疾患診療

 胆嚢結石・総胆管結石による胆嚢炎・胆管炎、急性/慢性膵炎などの良性疾患、胆道がん・膵がんなどの悪性腫瘍が対象疾患です。日本人の平均寿命が延びるにしたがい、これら胆道・膵臓疾患の発生数は増加しています。内視鏡を使用した低侵襲治療や、悪性疾患に対する化学療法など、専門的技能・知識を必要とする領域も多く、日々研鑽を重ねながら、診療に当たっています。

1.急性胆嚢炎、胆管炎
 胆嚢結石・総胆管結石による胆嚢炎や胆管炎は、ときに、生命をおびやかす重篤な感染症(胆嚢炎・胆管炎)に発展することがあり、これらの場合は、緊急的な処置が必要となることも多くなります。当科では、診療時間内・時間外を問わず、急性胆嚢炎に対する経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)、急性胆管炎に対する内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)を施行できる体制を整えております。

2.急性/慢性膵炎
 重症急性膵炎は、かつては死亡率30%を超える難病の一つでした。診断技術や治療手法の進歩により現代は6%程度まで低下していますが、それでも生命を脅かす疾患の一つには変わりありません。重症急性膵炎の治療には、当院の高度救命救急センターと共同で治療に当たります。
 慢性膵炎に伴う内視鏡的治療(膵管ステント留置、膵石除去)も行っております。

3.膵がん
 膵がんは、早期発見が難しいこと、進行が早いこと、また手術後の再発率も高いことなどから、長年の間、全身にできるがんの中で5年生存率ワーストの位置にいます。早期発見が困難、と言っても、膵内(特に膵管)に認められる微細な変化(狭窄や拡張)が早期膵がんの発見の契機となることがあります。また、腹部CTで分からない膵がんが、超音波内視鏡(EUS)を使用した精密検査を行うと発見できることもあります。当科では、膵管狭窄に対するERCPを使った膵液細胞診、超音波内視鏡による精密観察により、早期膵がんの発見に努めています。
 手術可能な膵がんに対しては、術前に薬物療法(化学療法)を行うのが通常となっています。当院外科(消化器外科)とも連携し、超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNAB)による診断確定、術前化学療法から手術へ、途切れることなく継続できる体制を整えています。
 手術不能であっても、放射線治療・化学療法など、患者さんの病態に合った抗がん治療を行っております。

4.胆道がん
 胆道がんは、肝臓内部の胆管から発生する肝内胆管がん(胆管細胞がん)、肝臓から十二指腸へつながる肝外胆管がん、胆汁の一時的な貯蔵庫である胆嚢にできる胆嚢がん、胆管の最終的な出口である十二指腸乳頭にできる乳頭部がんがあり、それぞれの部位によって検査や治療(外科的治療)の難易度が少しずつ異なってくるのが特徴です。毎週行われる外科・放射線科との合同カンファレンスにて、最適と考えられる治療方針を決定していきます。